アルカリ処理ココアとナチュラルココアの違いと代用のコツ
ナチュラルココアは酸性で重曹と反応し、アルカリ処理ココアは色が濃く味がまろやか。焼き菓子への影響と、入れ替えるときの分量の調整を解説します。
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同じ豆からできる、ふたつのココア
チョコレートケーキやブラウニーのレシピには、ただ「ココアパウダー」と書かれていることがほとんどです。しかし実際には、種類の違うふたつの製品があります。ナチュラルココアは、焙煥したカカオ豆から脂肪分を押し出し、粉末にしただけのもの。アルカリ処理ココア(「ダッチプロセス」とも呼ばれます)は、さらにアルカリ性の溶液で処理されています。この処理によって、色や風味、そして重曹やベーキングパウダーとの反応の仕方が大きく変わります。この記事では、両者の見分け方、そのまま入れ替えてよい場合と、レシピを調整したほうがよい場合を説明します。
アルカリ処理の歴史
ココアのアルカリ処理は、1828 年にオランダの化学者コーンラート・ヴァン・ホーテンが考案した方法です。水や牛乳に溶けやすく、苦味の少ない飲み物を作るための工夫でした。そのため英語では今でも「ダッチココア(オランダのココア)」と呼ばれています。日本やヨーロッパで市販されている製菓用ココアの多くは、このアルカリ処理タイプです。一方、アメリカではナチュラルココアが今も一般的で、アメリカのレシピの多くはナチュラルココアを前提に書かれています。アメリカの本やブログを参考にするときは、この点を覚えておくと失敗が減ります。
ナチュラルココアの特徴
ナチュラルココアは、赤みがかった明るい茶色で、フルーティーで少し渋みのある、はっきりした風味です。性質は酸性で、pH はおよそ 5〜6 です。そのためアメリカのレシピでは重曹と組み合わせることが多く、ココアの酸と重曹が反応してガスが発生し、生地が膨らみます。ナチュラルココアで焼いたお菓子は色が明るく、赤みを帯びていて、チョコレートの風味がシャープに感じられます。日本では輸入食品店や通販で「ナチュラル」「非アルカリ処理」と書かれたものを探すと見つかります。
アルカリ処理ココアの特徴
アルカリ処理ココアは、炭酸カリウムなどのアルカリ剤で処理されています。その結果 pH はおよそ 7〜8 の中性になり、色は濃く、風味は酸味が少なくまろやかになります。液体にも溶けやすいので、ホットココアにもぴったりです。見分けるには原材料表示を確認しましょう。「アルカリ処理」「炭酸K」「炭酸カリウム」などの表記があれば、このタイプです。
焼き菓子では何が変わるか
- ベーキングパウダーを使うレシピ:どちらのココアでも大丈夫です。ベーキングパウダーにはそれ自体に酸が含まれているので、ココアに依存しません。変わるのは色と風味だけです。
- 重曹だけを使うレシピ:基本的にはナチュラルココアが必要です。アルカリ処理ココアでは重曹と反応する酸が足りず、生地が膨らまずに詰まった食感になり、石鹸のような後味が残ることがあります。
- 膨張剤を使わないレシピ(ホットココア、グラサージュ、クリーム、トリュフ):好みで選んで構いません。アルカリ処理ココアのほうが色が深く、味もまろやかになります。
入れ替えるときの調整方法
レシピがナチュラルココア+重曹で、手元にアルカリ処理ココアしかない場合。重曹を 3 倍量のベーキングパウダーに置き換えます。たとえば重曹小さじ ½ なら、ベーキングパウダー小さじ 1½ にします。これで生地が膨らむのに十分な酸が得られ、仕上がりの色は濃くなります。
レシピがアルカリ処理ココア+ベーキングパウダーで、手元にナチュラルココアしかない場合。たいていは同量でそのまま置き換えられます。酸味を和らげたい場合は、ココア 15 g につき重曹を小さじ ⅛ ほど加えます。
どちらのココアもないが、ビターチョコレートはある場合。ココア 15 g につきカカオ分 70% のチョコレートをおよそ 25 g 使い、レシピのバターを 10 g 減らします。チョコレート自体に油脂が含まれているためです。砂糖も少し控えるとバランスがよくなります。
具体例:バターミルクのチョコレートケーキ
バターミルクと重曹を使う定番のチョコレートケーキは、ナチュラルココアで作るのがいちばんです。バターミルクとココアの酸が十分にあるので、しっとりふんわりとした生地になります。アルカリ処理ココアしかない場合は、重曹に加えてベーキングパウダー小さじ 1 を足しましょう。このようなケーキは、一般的に 180 °C のオーブンで 35〜40 min ほど焼きます。竹串を刺して、何も付いてこないか、しっとりしたくずが少し付く程度なら焼き上がりです。
どちらのココアにも使えるコツもあります。ココアに熱湯かコーヒーを注いで 2〜3 min 置いてから生地に混ぜると、香りがぐっと引き立ち、ダマにもなりません。ブラウニーやケーキでは、風味の違いがはっきりわかります。
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カロリーはどちらもほぼ同じで、大さじ 1(約 5 g)でおよそ 12 kcal です。ただしアルカリ処理によって、カカオに含まれる植物性の抗酸化成分であるフラバノールは大きく減少します。この点を重視するなら、ナチュラルココアのほうが有利です。砂糖入りの調整ココアはお菓子の仲間と考え、純ココアの代わりには使わないほうがよいでしょう。
よくある失敗
- 重曹だけのレシピにアルカリ処理ココアを使い、ベーキングパウダーを足さない:ケーキがしぼみ、石鹸のような味になります。
- 純ココアの代わりに砂糖入りの調整ココアを使う:甘すぎて、チョコレートの風味が足りません。
- ココアをふるわない:重い生地の中でダマが残ります。
- ココアをチョコレートに置き換えたのにバターを減らさない:重く油っぽい仕上がりになります。
保存方法
ココアは密閉容器に入れ、直射日光と高温を避けて保存しましょう。においを吸いやすいので、スパイスのそばには置かないようにします。この条件なら、香りは 1〜2 年ほど保てます。湿気はダマの原因になるので、すくうときは必ず乾いたスプーンを使いましょう。
よくある質問
家にあるココアがどちらのタイプか、どうやって見分けますか?
原材料表示に「アルカリ処理」や「炭酸K」とあればアルカリ処理ココアです。色がとても濃く、香りが穏やかなことも目安になります。
ホットココアに向いているのはどちらですか?
アルカリ処理ココアです。溶けやすく、まろやかな味になります。牛乳 1 杯に大さじ 2 が目安です。
ブラウニーのレシピは変える必要がありますか?
ほとんどの場合、必要ありません。ブラウニーは膨張剤が少ないか、まったく使わないからです。アルカリ処理ココアなら色が濃く、ナチュラルココアなら風味が強くなります。
賞味期限を過ぎたココアは使えますか?
乾燥していて異臭がなければ、たいてい使えますが、香りは弱くなります。においを確かめ、風味が弱ければ少し多めに使いましょう。